#02
日本には、豊さを実現する住環境がない?
株式会社Francfranc 代表取締役社長・高島郁夫

高島さんが見据えている住まいにおける豊かさとは?

北村

最後に伺いたいことがあります。
プライベートで「挑戦」という言葉を使うのは、もしかすると違うのかもしれない、と高島さんのお話から感じました。
でも、自然とご興味が湧くものっておありなのですね。次はどこに興味は向かいそうですか。

高島

まあ、悠々自適に暮らしていけたらいいかなと思っていたんですが、むくむくと頭をもたげてきたものがあって・・・・・・。これが家なんですね。

北村

ああ、ここで最初の話に戻る、と。

高島

今回いろんな物件を探して、カタログもたくさん手にしました。
ただ、理想の家ってなかなか存在しない。日本の住宅って選択肢に乏しいなと。
そこに関われたらいいなと思っています。

米澤

日本人の暮らしを変えるってことですよね、きっと。
日本の住宅って本当にバリエーションがなさ過ぎるというか、結局3LDKとかになっちゃって。
子どもがいる生活だと必要かもしれないですが、子どもが独立して夫婦ふたりなんだけど、
ある一定の広さが欲しいっていう人には、全く合ってないですよね。

高島

シニアカップルとか、若くてそれなりにお金持ってるカップルに合った間取りってないので・・・・・・。
実際、自分もいろんなところを見ても、理想の家に出逢えなかったですし。
先日、自分が生まれた故郷に帰った時に気づいたんですが、地方の建売住宅などは特に、ただ雨風をしのぐ家にしか思えなくて。

米澤

外観はちゃんとしていますが、中身は残念な感じ。

高島

地元は、50年前に開発された町なんです。
山を削って、碁盤の目に整地されたところなんですが、そこには数軒デザインがいい家がある。
だったらそれこそ、町ごとブランディングとかも面白いんじゃないかなと思って。

故郷の話に限らず、建売もそうだし、都心のシニア向けの家もそうです。
日本の住環境ってずいぶんと考え方が貧困みたいだから、何かをなせる余地がある。

北村

建売はそうですよね。全部同じ形で、いかに効率化してやるか。

米澤

暮らしの多様性が、高度経済成長期のモデルから変わってなくて今の時代に追いついてないように感じます。

北村

家の選択肢が少ない。だから自分のスケールを家に合わせないといけない。

米澤

ヴィンテージマンションが、今、とても人気があると聞きました。
古いんだけど、昔から外国人が住んでて結構広めで天井高くて。
ただ、そういう物件も限られてますね。
不動産業の人も、先ほどの若い起業家の話じゃないですが、お金儲けが優先で、住む人のことはあんまり考えてないかもしれませんね。

北村

住む人の都合より、建てる人の都合が優先されている感じがしますね。
高島さんのおっしゃっていることは、いっとき流行ったデザイナーズマンションやリノベ物件のような単純な見映えの話とは異なりますね。
消費者がもしかすると自分自身でも感じていない、本当のニーズが別のところにある。きっと、既存の業界内からは、答えが出てこないのかもしれない。

高島

自分もこういう商売をしているから、ものづくりも家づくりも一緒だなと感じます。
どう実現するのかということは、何となく自分のなかで湧いてくるので。

米澤

ずっと暮らしと関わってきたからですかね。

北村

自分が身を置く空間の話というところに共通項があります。

米澤

以前、建築家の伊東豊雄さんに取材した時に「外側から家を作るんじゃなくて一脚の椅子から家を作ることもあっていい」という話を聞いたことがあります。
つまり、その家にとって何が大事なのかと。リビングが大切な人がいれば、寝室が大切な人もいますよね。

高島

僕の場合は奥さんとの関係です。大事と思うところは、揺るがせないほうがいいですよ。
だからこそ、僕の場合、究極の間取りって決まっているんです。これしかないっていう間取りがあるの。

北村

ご自身の次の新居の案ですか。

高島

それもありますね。この間取りができたら、皆さん喜ぶんじゃないかっていう空間です。

北村

気になりますが、それは今の時点で伺わないほうがいいかもしれませんね。実現されたら、ぜひ改めて教わりたいところです。

プロフィール紹介

  • 高島郁夫
    1990年に輸入家具・インテリア用品の販売会社、株式会社バルスを設立。1992年、東京・天王洲アイルに「Francfranc」1号店をオープンしてから、現在は国内外に134店舗を展開する。著書『遊ばない社員はいらない』など。
  • 北村森
    日経トレンディ編集長を経て、2008年に独立。
    消費トレンド分析、商品テストを専門領域とし、NHKラジオ第1「Nらじ」などに出演。
    また、ANA「北村森のふか堀り」をはじめとした地域おこしプロジェクトにも数々参画。
    著書『途中下車』は2014年、NHK総合テレビでドラマ化された。サイバー大学IT総合学部教授(商品企画論)。
  • 米澤多恵
    ぴあ株式会社では編集した「ベラベラブック」が累計250万部以上のダブルミリオンセラーに。
    その後、株式会社幻冬舎にて男性ライフスタイル誌「GOETHE」の創刊に参画。
    以降12年副編集長を務める。
    2017年に株式会社エピキュリアンを創業。会員制ウェブサイトEpicureanをローンチ。

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