高島さんがあるBARで飲んでいる時、
隣に偶然いたお客が「ビジネスで成功して企業価値を10億円にして、それを売って悠々自適に暮らす」と言ってたのを聞いて、
高島さんは「あなたにはそれは叶わない」と思ったそうですね。その心を教えていただけませんか？

これはビジネスに対しての自分の考えかもしれませんが、
なぜビジネスをやるかというと、人々がそれを必要としているから、あるいは、それを通してお客様が満足するから、っていうのが原点だと思うんです。
そう考えないビジネスは、成功しないと確信しています。

そういう意味だったのですね。

商売の原点はもともと、物々交換ですよね。
野菜が欲しい人と、肉が欲しい人がそれぞれを交換する。
最初からお金儲けありきだったら、ビジネスは絶対成功しないと考えています。

相手に喜んでもらってはじめてビジネスの意味がある、っていうことですね。

そうです。その対価としてお金をいただくわけなので。
「この会社を作って、これくらい儲けて」というところから始まるビジネスが成功するわけないじゃん、って思うんです。

必要なものに対して何らかを提供するからこそ、経営も現場も成り立つ。

それが軸にないと。だいたい、最初から売却するのが目的である会社なんて、誰が欲しいと思うのかと。

歌いたいとか、舞台の世界で演じたいとか、そういった目的があるわけではなくて、ただ「有名人になりたい」っていうのと一緒ですね。

そうそう。結果としてそうなるものですよね。

ここまでの高島さんのお話も、まさに色とりどりでした。
経験というのは、彩りがあるほうが、きっといいですよね。高島さんは、どうやって彩ってこられたのでしょうか。

毎日暮らしていくなかで、いろんな興味とか関心が自然と湧いているんでしょうね。
突き詰めて、その道の極意を掴もうと動くわけでは決してない。

極意を掴まなくても、それはそれでいい、と？

そうです。そこまで行かなくてもいい。飽き性ですし、「世の中こういうものか」という道理がわかれば、それでいいんです。

突き詰めることで、その分野に誰よりも詳しく通じるようになり、
例えば日本酒をひとくち飲んだだけで精米歩合の想像がつくとか、ワインのヴィンテージイヤーを縦横無尽に語れるとか、そこまでいかなくていいんですね。

諦める分野も必要だと思うんです。ワインなんて僕は全然諦めているから。美味ければいいじゃんって思ってます（笑）。
お店に行った時のソムリエさんの説明も、あまり･･････（笑）。彼らは一生懸命なんだけど、僕にとってはそこまで興味がなくて。

高島さんは、「豊かになる＝ひとつの事象のなかで楽しみを見出す」とおっしゃいましたが、
それは、とことんその道に通じることと、必ずしもイコールではないんですね。
言ってみれば、「苦行になる必要はない」ということでしょうか。

そうですね、辛かったらやめたらいいですよ。英語もやめちゃいましたし。

クリアしようと攻めていく必要はないんですね。

そうですね。苦しいことはやめようとか、会うのが嫌な人とは顔を合わせるのをやめようとか。それでいいじゃんって思うんですよね。

高島さん、ゴルフもやめましたね。

趣味はいっぱいあって･･････。楽しいか楽しくないかで考えると、相対的順位が一番低いのがゴルフでした。
それと、あくまで僕のケースで言えば、僕はサーフィンが好きですが、
晴れたら海に行きたいなと思うけれど、嵐のなかでも海に行きたいとまでは思わないですね。

自分が楽しんでんだから、自分の好きなようにすればいいだけで。
「でかい波に乗った」って誰かに自慢されても、そうですかって。僕は怖いからいいやって。軟弱でいいんじゃないかと思います。

そこは結構、人が見誤るところかもしれません。
自分自身に必要かどうか、さらに、どこまで必要かは、自分で決めたらいいんですね。例えそれが軟弱なレベルであっても。

そうですね。だからワインも捨てましたし、英語も捨てましたね。あと和装も。