#01
1本の筆記具のこと、何分間、話せますか?
エピキュリアン代表・米澤多恵

エピキュリアンを立ち上げたのは「文化の成熟度」をあげたいから?

北村

そもそも、どうしてエピキュリアンを始めようと思ったのでしょう?

米澤

大それたことを言うと、私の目標は「日本の文化の成熟度を上げる」なんです。
長い歴史上そういう社会だったので仕方ない面もあると思うんですが、
日本人って、無意識に他人軸で物事を決めたり選んだりする傾向が強いと思うんです。
「みんなが買いたがるブランド」とか「一番人気の商品」といった言葉がまさにそうなんですが、
「みんな」という誰かわからない人に合わせる、誰かわからない人たちの「一番」に合わせる。

北村

グルメサイトでの星いくつ、とか(笑)。

米澤

前職のころ、海外の著名な方に会う機会も多くて、ある時、誰もが知る世界的企業のCEOが、大切に使っている万年筆を見せてくれたんです。
それは、よく知られたブランド万年筆ではなくて、蚤の市で見つけたもので。
私が尋ねたわけでもないのに(笑)「俺はこの万年筆のここが好きだ」と20分以上熱く語るんです。
そういう感覚って、日本人にはあまりないなぁって。

北村

確かに……。「いいね!」の数を気にする企業も多いけれど、
もっと大切なのは、作り手と使い手の関係性の深さですよね。
例えば、有名な和食屋を新規開拓するよりも、
たとえ無名でも、自分との相性がいい和食屋に通い詰めるほうが、もしかすると気持ちも良いかもしれないし、
四季を通じて旬の食材を知るという楽しみも生まれるかもしれない。

米澤

今、同じようなモノやサービスが溢れてるとしたら、それは「みんな」同じモノやサービスを選んでるからだと思うんです。
もし、CEOの万年筆みたいに自分軸で選ぶ楽しさを発見して、もっといろいろなことを自分軸で選ぶ人が増えたら、
供給側の意識も変わってモノやサービスのバリエーションも広がると思うんです。

バリエーション豊かなモノやサービスがあって、それを多様に楽しむ人が増えれば、
つまり、文化の成熟度が上がることにも繋がる。だから、エピキュリアンには誰もが知るブランドとか、
ある意味で評価がすでに定まっているものは置いていません。

エピキュリアンのプログラムの中から自分軸で選択したモノが予想を超えて楽しかったら、
また次も……と選びたくなって、自分の中に経験がどんどん増えていく。それが人生の豊かさにつながると思っています。

北村

エピキュリアンでの米澤さんはどんな立ち位置なのでしょうか。
コンシェルジュ? 会員と一緒に楽しむ仲間みたいな存在? 先導役?

米澤

どれですかね?(笑)

北村

先導役に近い気もします。
ちなみに、エピキュリアンのプログラムを発掘するにあたって、どう目利きしてるのですか。
どうやってその目を培ってきたんだろうか。

米澤

目利き……。

北村

例えば、室町時代のなんとか、とか……。
知見を身にまとったうえで、プログラムを作成しているのかな、と。

米澤

そういった話でいうと、知識とか知見で選んでるわけではないですね。
どちらかと言えば、おもしろいかどうかと感じる目利き、かな。
ちなみにですが、エピキュリアンのコンテンツは、ほぼ私も体験しています。

北村

なるほど……。モノ、サービス、すべてにおいて、自分の軸で気に入るものを取り入れることが大事と、実感できますね。
ところで、ある程度年齢を重ねた人よりも、若い人のほうが、自分の軸で選ぶことに抵抗が少ないのでしょうか。

米澤

いえ、言い切れませんね。
そういった意味では、エピキュリアンの会員は、下は20代から上は70代まで世代の幅が広いのが特徴です。いろんな人がいます。

エピキュリアンの会員やサービスの特徴とは?

北村

ちなみにエピキュリアンの会員ってどんな人が多いのですか。

米澤

知らないことを知りたいとか、やったことがないことにワクワクする、人と会って話をするのが好き、という人が多いかもしれません。
あと、決断が速い。「面白そうだ」「やってみたい」と感じたら迷わずやってみる。
それと、可処分時間がある人。自分のための時間を確保できる人です。

北村

競合するサービスってあるのでしょうか。ギフト用カタログのサービスあたりになる?

米澤

私は今のところ思い当たらないのですが、北村さんご存知ないですか?(笑)

北村

他サービスと決定的に違うのは、プログラムを実行する事業者の側が手数料を払って参加してるわけじゃないんですよね。
米澤さんがおもしろいと思ったものを集めて掲載している。
米澤さんが持続させていくことで、事業者が助けられる一面もあるかもしれません。

米澤

そうですね。
ただ、事業者の救済や地方創生サービスをやってるわけではなく、
会員の皆さんに他では買えないモノや得られないサービスを楽しんでもらうことと、
事業者の皆さんにも利益をお渡しできることの両立が一番だと思っています。
だから、検索したらよそでも同じものが買える、できるのでは……。

北村

他にはないモノじゃないと、意味がない、と。

米澤

あとは、エピキュリアンのなかで、会を作ってしまうこともあります。
せっかくその場に集った皆さんなので、全員、知り合っていただきたい。
そのために会の人数は多くても15人ぐらいまでにしています。

実際に知り合った会員の間でビジネスが生まれたこともいくつもありました。
会員同士だけでなく、エピキュリアンのビジネスも会から広がることもあります。

例えば、極秘の国産キャビアも、当初は養殖場を訪問するプログラムでしたが、
やはり、参加した会員の人柄の良さに、エピキュリアンのウェブ限定でのキャビアの販売につながりました。

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