限られた会員だけにエクスクルーシブなモノやコトを提供する「Epicurean(エピキュリアン)」。
それは名だたるシェフたちが奇跡の味と評するみかんジュースだったり、紹介でしか受けられない凄腕の施術だったりとさまざま。
一見、富裕層向けの高級サービスかと思いきや、そんなことは毛頭なく、目的は発見する悦び=人生の豊かさ」に気づいてもらうことだという。
そんなエピキュリアンを主宰しているのは、男性ライフスタイル誌「GOETHE」で、12年にわたり副編集長を務めた米澤多恵。
2017年に設立してから、年間約100本ものプログラムを提供してきた舞台裏はどんな様子なのだろうか?
かつて、米澤と机を並べた同志であり、
「日経トレンディ」編集長を経て現在はを軸とした全国各地のプロジェクトに参画している北村森が、その真髄を探る。
2020年以降、コロナ禍で環境がガラッと変わって、“あなた”という意識が強くなった気がします。
少なからぬ消費者が、「こんなにいい商品を作っている“あなた”だからお金を出して応援したい」と考えるようになっていますね。
コロナ禍と言えば。和歌山県に伝統的な「鯖のなれずし」を作る老舗の名店があったんです。
そもそも、なれずしって魚を発酵させて作る日本古来の保存食なんですが、販売しているなれずしの発酵させてる期間は3日くらい。
それをエピキュリアン向けに、1ヶ月発酵させたものを作ってもらったんです
今なぜ、なれずしに着目したのですか。
もし「そのなれずし美味しいの?」と聞かれたとしても、
私たちはグルメセレクションのサイトではないので、美味しいかどうかは斷言できません(笑)。
日本人がずっと食べてきた、昔の日本人が食べていた「鯖のなれずし」がどんな味かと想像して食べる経験を提供してるんです。
残念ながら、コロナの影響もあって閉店されてしまったんですけど。
美味しい、と万人には断言できないものを、どうして?
初めから美味しいと分かって食べるより、
どんな味なんだろう?昔の人の味覚ってどんな感じなんだろう?
とワクワクしながら実現した体験が「人生の豊さ」に繋がると思うんですよね。
遊びってそういうことですよね。僕は、米澤さんはエピキュリアンを通して、津々浦々にある遊びを紹介していると思ってるんですよ。
面白いテーマをキャッチして、作り手と消費者を綺麗に繋いでいる。
「これってどうなのか知りたくない?」っていう好奇心がみんなを動かすといいますか……。
ちなみに「鯖のなれずし」は5,000円で、手が出せないほどに高いものでもないんです。
けど、最高の体験ができる5,000円。
そういうものを堪能できる機会を作るのがエピキュリアンですし、それは生産者に対しても還元できることだと思うんです。
わざわざ「地域の取り組みではサスティナブル(持続可能)であるのが大事 」なんて大声で唱えなくても、
エピキュリアンが粛々とそれを実現しているという話に感じます。
きちんとモノやサービスを提供している人に対価を払いながら、
一方でそんな方々から「エピキュリアンの会員は本当に素晴らしい」と言われることも多くて、それは私の誇りです。
そういえば、エピキュリアンでは「国産キャビア」を食べる企画がありましたね。
僕も参加しました。僕、食材や料理に関しては常々思っていることがあります。
よく、「こんなの、初めて食べた!」といった感想を原稿に綴ったり、語ったしたりする人がいるでしょう。
でも、それってどうなのだろうと感じるわけです。ただただ、その人にとって食べた経験がなかっただけの話に過ぎないかも、としらけてしまうんです。
ところが、この国産キャビアに限って言えば、この時はさすがに「なにこれ! 初めて食べた!」と、僕を含む全員がためらいなく叫んだ(笑)。
本当にこれキャビア?みたいな(笑)。
誰もが知るようなしょっぱい卵ではなくて、本当に卵っぽいというか。
あのキャビアを知ってるからこそ、今までのキャビアをより理解できますよね。
「知っている」ことはやっぱり、世界を広げるきっかけになるのだと思います。
「鯖のなれずし」の話も、そうですね。
「へぇ!」って発見する喜びってあるなって……。
ひとつ思い出したのが、エピキュリアンのプログラムに「チネイザン」って言う施術があるんですよ。
タイに世界的に有名なホリスティックリゾートがあって、そこでご活躍された世界屈指の施術者が実は日本人で。
彼女にどういう施術か尋ねると「内臓をあるべきところに戻して自己免疫力を高める」と。
その話だけ聞くと、ちょっと怪しく感じると思うんです(笑)。
けれど、彼女の人となりは素晴らしいし、実際に受けてみたらその効果に驚いて。
なるほど。世の中にはまだ知られていないけど、自分の世界や価値観を広げる体験がたくさんある。
それを紹介しているのがエピキュリアンなんですね。