#03
手仕事には本当に価値があるのか?
野川染織工業株式会社5代目・野川雄気

豊さとは、経験から得られる “自分軸”

北村

最後の質問です。この鼎談は「豊かさ」がテーマではあるんですが、その言葉を使わずにここまで話を聞いてきました。
「豊かさ」は軽々しく使う言葉ではないし、エピキュリアンのキーワードでもあるからです。
そして最後に野川さんに伺いたいのは、つくり手としてでも、一人の人としてでも構いません、「豊さ」とは、なんでしょうね?

野川

一言でうまく言えないんですけど、私は東京の大学を卒業して3年間サラリーマンを経験して、
家業に戻ってきて丸3年が経ちます。
「豊かさ」を意識するようになったのは、ここに帰ってきてからなんです。

東京にいた時は、周囲にいろんなものがあって刺激も多かったですが、ノイズも多かったかと。
実家に戻り、ものづくりをしながら、日常で使うものをつくってきました。
そうすると、自分自身が生活していても、「これを着たら」とか「これを食べたら」とか、人生の充足感が全然違うと思ったんです。
食べるものも使うものも、身の回りのものを、いかに自分の直感に合ったものを選んでいるかが、人生の豊さに繋がると思いました。

北村

自ら選択して知るという自律的な審美眼というか、それができる人が僕から見ても豊かな人だと思います。

米澤

エピキュリアンのサイトにも私が書いていますけど、自分軸をしっかり持っている人。
それは別に正しいとか、正しくないとか、そういう話ではありません。

例えば工業製品ばっかり選んでも、それがその人の軸であればそれで良い。
自分軸を持ってて、その軸に合うものを自発的に選んで生活しているのはすごく豊かなこと。
知名度とか格付けに影響されず、周囲から自分がどう見られるかとか見栄とかとか一切なく、生活を楽しむことですね。

野川

それは、経験をしないと相対的に分からないと思います。
私も東京で暮らした経験があるので、相対的に今の生活が豊かで幸せだと思えるようになって、
自分には合ってたというのに気づきました。色々と経験しないと分からないですよね。

北村

僕らが存在を知らなかったものがエピキュリアンのプログラムにはあって、
知らなかったけど、「これは自分のものだ!」って気づけるんですね。

米澤

自分に合ってるかどうかは、実際に買ったりやってみないと分からないですしね。
このガーゼタオルがすごく良いものかどうかは人によっても違うと思います。
その人に合っていれば最高だし、合わなかったとしたら、また違うものを探せば良い。
そうやって、「経験」していくこと自体を楽しめたら、日々がどんどん豊かになると思います。

北村

こうしたプロセスそのものもまた、豊かな時間であるかもしれませんね。

プロフィール紹介

  • 野川雄気
    埼玉県羽生市生まれ・育ち・在住
    大学時代の専攻は生物学、在学時に米国アリゾナ州立大学へ1年間留学。
    東レ株式会社で営業として3年間勤務・退職後、家業である野川染織工業株式会社へ5代目跡継ぎとして2018年入社。
    藍の先染め技法を強みとした実用的な商品を世の中へ提案している。
    全日本剣道連盟五段。
  • 北村森
    日経トレンディ編集長を経て、2008年に独立。
    消費トレンド分析、商品テストを専門領域とし、NHKラジオ第1「Nらじ」などに出演。
    また、ANA「北村森のふか堀り」をはじめとした地域おこしプロジェクトにも数々参画。
    著書『途中下車』は2014年、NHK総合テレビでドラマ化された。サイバー大学IT総合学部教授(商品企画論)。
  • 米澤多恵
    ぴあ株式会社では編集した「ベラベラブック」が累計250万部以上のダブルミリオンセラーに。
    その後、株式会社幻冬舎にて男性ライフスタイル誌「GOETHE」の創刊に参画。
    以降12年副編集長を務める。
    2017年に株式会社エピキュリアンを創業。会員制ウェブサイトEpicureanをローンチ。

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