#03
手仕事には本当に価値があるのか?
野川染織工業株式会社5代目・野川雄気

限られた会員だけにエクスクルーシブなモノやことを提供する「Epicurean(エピキュリアン)」。
経験は人生を豊かにするという代表・米澤多恵の想いに賛同し、
起業家からクリエイター、スポーツ選手まで、 多種多様なバックグラウンドを持つ方々が会員として名を連ねている。



そんなエピキュリアンたちの「人生の豊かさ」を、「日経トレンディ」編集長を経て、
現在は地域を軸とした全国各地のプロジェクトに参画している北村森が握り下げていく本企画。



今回のゲストは、埼玉県羽生市で天然発酵の蓋建てにこだわり、
糸染めから製織、織り上がった生地の加工まで一貫して手掛ける生粋の織染め紺屋
「野川染織工業株式会社」の5代目 野川雄気さん。
エピキュリアンにも、国産の天然藍で染め上げたガーゼタオルを提供しています。



第3弾は、つくり手である野川さんをゲストに迎え、米澤と北村が人生の豊かさについて語り合う。

北村

そもそも、なぜエピキュリアンに天然藍染の大事な商品を提供しようと思ったんですか? よく思い切ったなと。

米澤

なんてことを笑

野川

そんな(笑)。ちなみに、埼玉県の北部地域を武州というんですけど、武州の藍染ってご存知でしたか?

北村

正直に言うと、藍染は徳島だと思っていました。

野川

そうですよね。
最終的なプロダクトで言うと、久留米の久留米絣や岡山のデニムとか、一般の方はそのイメージが強いですよね。
弊社も創業107年目、私で5代目ですが、ずっと天然藍を用いて糸を染め、生地をつくり、
エピキュリアンで販売しているタオルや日用品をつくっているんですが、やっぱり知名度が低いんです。

北村

なぜでしょうか?

野川

武州藍と言えば、今は剣道着とか袴が有名ですが、
もともとは農作業服や野良着など庶民が使うものの需要を支えていた地域なんです。
それが農業の機械化により需要がなくなり、産業としての需要を剣道着や袴に切り替えたんですね。

北村

なるほど。それはいつ頃ですか?

野川

昭和20〜30年頃、弊社の代表が生まれた前後くらいですね。
それもあり、実は剣道界では、武州の藍染は割とブランディングできているんです。
ただ、一般の方の知名度は低く、「羽生で藍染?」のような感覚が強いんですね。
とはいえ、長い歴史の中で培われてきた技術とか産業としての信念は、製品を通して多くの方に知っていただきたいですし、
もともとが野良着とか肌に触れるものがルーツなので、エピキュリアンのガーゼタオルのように、ぜひ肌に触れて使っていただきたい。
そういう経緯で、商品をださせていただきました。

北村

そうなんですね。すごく品のない質問で恐縮なのですが、決して安くはないですよね? それでも、原価相応なのでしょうか?

野川

そうですね。商品にもよるのですが、糸を染めて織機で生地にして、となると、ロットが相応にかかるんですね。

北村

すべてが一気通貫で、この建屋の中で始まって終わるのですか?

野川

厳密にいうと、糸を染めるための綛(かせ)という状態にするのは外部に委託することもありますが、
羽生市から出ることは基本的にないんです。
実は、弊社のように糸染めから最終製品づくりまでやっているところは、日本全国でもほとんどありません。

米澤

エピキュリアンのために特別にガーゼタオルを作ってもらう時、ここを訪ねたのですが、その時に「もう数えるほどしかない」と伺って、驚きました。

野川

そんななかで、(エピキュリアンが取り扱っている)ガーゼタオルは、一つ一つ職人が手で染めて絞ってつくっています。
それも、ただ、染めて絞っているのではなく、毎日管理した藍液を、歳をとった藍から染めていくんです。

北村

藍には歳があるんですか?

野川

今工房には10個前後の藍甕と呼ばれる長い甕があり、一つ一つ藍の年齢が違うんですよ。
藍はもともと、蒅(すくも)という植物を液体にして使うのですが、その蒅に宿る微生物が発酵する力を使って染めています。
なので藍液の管理は、歳をとっているとか疲れているという表現が分かりやすいくらい、生き物的な扱いなんです。

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