九州・有明海にある、その牡蠣生産者のブランドは「海男オイスター」。ただ美味しい牡蠣をつくるブランドではありません。出発点にあるのは、「牡蠣の力で海を救いたい」という代表・梅津聡さんの強烈な使命感です。潜水士として有明海の海に潜り、ヘドロが積もり、魚介類が減っていく現実を目の当たりにした梅津さんは、海水を濾過する牡蠣を増やすことで、生態系を取り戻そうと養殖研究を始めました。10年以上の歳月と数億の私財を投じて開発したのが、特許取得済みの独自バスケット養殖です。牡蠣の数や水深、潮や波、空気に触れさせる時間、育成期間などを細かく調整することで、海水温の変化にも左右されにくい「失敗しない養殖」を実現。さらに、牡蠣の大きさや殻の深さ、身入り、味わいまで狙った仕上がりを叶えます。こうして育てられた牡蠣はふっくらと肉厚で、雑味やえぐみ、生臭さがほとんどなく、濃密な旨みと深い甘み、澄んだ余韻が際立ちます。この革新的な技術を学ぼうと、日本各地はもとより海外からも視察が訪れています。美味しい牡蠣をつくりながら海を再生し、漁業の未来まで変えていく。それが海男オイスターです。
言わずと知れた日本を代表するフレンチの名シェフ、岸本直人さん。フランスでの研鑽や銀座「オストラル」を経て、2006年に南青山で「ランベリー」を開店。13年間にわたり店を率い、ミシュランガイド東京で累計12の星を獲得。でも、岸本シェフの特別さは、その華々しい経歴だけではありません。青山・広尾で築き上げた成功の形を自ら手放し、「もっと出来たての美味しさを届けたい」「世界に誇れる日本の食材や匠を伝えたい」と、自らの名を冠した「naoto.K」を神田錦町に開いたことにあります。掲げるテーマは「旬と瞬」。日本の四季が生み出す食材を、その美味しさが頂点に達する瞬間に供するため、客席は料理人の手元まで見渡せるカウンターのみ。技法を誇示するのではなく、食材とその背景にいる作り手の思想まで受け取り、一皿を通して客席へ伝える岸本シェフ。だからこそ、海と漁業の未来まで背負う海男オイスターとの共演が実現するのです。
牡蠣を育てながら海を再生しようとする梅津聡さんと、食材の作り手の思いまで料理で伝えようとする岸本直人シェフ。今回の特別ディナーは、単に高級な牡蠣を使ったフレンチではありません。「海の未来を変えたい」という生産者の執念を、「食べる体験」として一皿に結実させる、二人だからこそ成立するコラボレーションです。岸本シェフは、味や大きさまで意図をもって育てられた海男オイスターをどう読み解き、どんな料理へ昇華させるのでしょうか。当日は、この特別な夜のために、梅津さん自ら有明からnaoto.Kへ駆けつけます。ディナーの冒頭には、なぜ海を救うために牡蠣養殖を始めたのか、10年以上をかけて生み出したバスケット養殖が従来の方法と何が違うのか、そして「失敗しない養殖」が日本と世界の海をどう変えていくのかを、ご本人から直接お話しいただきます。その挑戦と物語を知ったあとに味わう、岸本シェフ渾身のコース。牡蠣を見る目も、一口の重みも、これまでとはまったく違うものになるはずです。美味しさの先に、海と漁業の未来まで見えてくる一夜。ここでしか生まれない料理と、ここでしか聞けない物語を、ぜひご体験ください。
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