お誂えのスーツにビスポークの靴。どこに出ても恥ずかしくないワードローブは揃っている。なのになぜ、シャツだけ既製品?と、違和感を感じたことがある人は、なかなかの洒落者かも。たとえば、ロンドンなら「Turnbull & Asser(ターンブル&アッサー)」、ナポリなら「Anna Matuozzo(アンナ・マトッツォ)」など、お仕立てシャツにもレジェンダリーブランドがいくつかあります。シャツは第二の皮膚ともいうべきアイテムですから、ロイヤルファミリーや首脳クラスの要人たちと同じ顧客リストに名を連ねるのは単なるステイタスではなく、それだけの価値があるということ。ところが、日本でのシャツの扱いは、哀しいかな、消耗品です。フルオーダーのスーツにさえ、大量生産の手頃なシャツ、またはパターンオーダーのシャツで間に合わせてしまう人が多いというのは、どうなのでしょう? そこで今回ご紹介するのは、美しく、軽やかな着心地で“まるで羽衣のよう”と絶賛される国産のフルオーダーメイドシャツ「YAMAGAMI Masanori(やまがみ まさのり)」です。ファッションデザイナーからオーダーメイドのシャツ職人に転身した山神正則さんの神技は、海外でも絶賛され、引く手数多。お客様と真摯に向き合って1枚のシャツに精魂を込めたいという思いから、普段のオーダー枠は会員顧客のみとのことなのですが、今回特別にエピキュリアンに扉を開いてくださいました。
山神さんが手がけるオーダーメイドシャツは、ちょっと罪作りです。その着心地を知ると、既製品に手が伸びなくなります。そして、他の生地や色違いもと、続けて注文してしまう。相応のコストと時間がかかっても、山神さんが仕立てるシャツでなくてはならない理由がいくつもあるのです。まず、第一に生地。山神さんが扱うのは、生産量がごくわずかなシャツ生地の宝石といわれるイタリアのCARLO RIVA(カルロリーバ)。もう一つは、水質にまでこだわり、しっとりとした肌触りで、他に類のない上質さから、生地の女王と称されるスイスのALUMO(アルモ)。山神さんは入手困難なこれらの上等な生地を、何日もかけて“仕込む”のです。ロール状に巻かれた出荷直後の生地は乾燥し、ヨレやたわみが生じたストレスフルな状態なのだそう。だから、ハサミを入れる前に何度も洗って水に浸し、揉みながら糸の緊張をほぐして生地を最高な状態に整えます。すると生地はよりふんわり、もっちりし、身に着けてもまるで着た感じがしない、肌を優しく撫でる羽衣の風合いが生まれるのです。それほど繊細なのに、「縮まないように仕込んであるので、家の洗濯機でジャブジャブ洗ってください」と、山神さんが自信たっぷりに言うように、タフなのもまた、神技の不思議。「身に着けるほど肌になじみ、既製品とは一線を画す唯一無二のシャツに仕上がっていきます」とのこと。いわく、上等なシャツは何年も持つそう。顧客たちが何度もリピして離れられなくなる理由は、そういうことなのですね。
山神さんの探究心から導き出された独自技術とメソッドは、仕立ての工程でも冴え渡ります。その真骨頂ともいえるのが、ボタン付け。生地とボタンの間に指がすうっと滑り込むように、傾斜をつけて縫い付けるので、シャツを脱ぐ時に片手でリズミカルにボタンを外せます。しかも、上から3つは3mm、お腹周りは2mm、裾の方は4mmと、縫い糸を巻きつける糸足の高さを変えているというこだわりよう。「ボタンのことだけでも3日は語れるシャツオタク」と自負する山神さんですが、信条を聞けば「機能として役立つことのみ」と言い切ります。たとえば、肩幅とアームホールには特徴的な仕立てがあるのですが、これは肩の可動域を徹底的に追求したデザイン。車の運転席に座ったまま後ろに手を回し、後部座席にハンガー掛けしたスーツを取ろうとすると、既製のシャツとの違いがはっきりわかります。かといってダブついているわけではなく、体にぴったりのジャストフィットな究極のシルエット。その極意は “山神カルテ”にも秘められているようです。ボディの採寸は20箇所、利き手はどちらか、腕時計はするかなど、ライフスタイルの聞き取りもあるのだとか。筆舌を尽くしても表現できないその驚異の着心地を、特別なこの機会にぜひ、ご自分で確かめてみてください。
他では手に入れられない、
会員のためだけに仕立てられたプログラムをご提供します。
※コア会員は招待制となっております。入会にはコア会員からの招待コードが必要です。