
夜の茶席や夜話の会、お茶屋などで芸舞妓が舞う際に用いられる和ろうそく。その幻想的な美しさは、見る人を惹きつけます。和ろうそくが日常的に使われるようになったのは室町時代の頃で、当初は貴族や権力者だけが使えるものだったそう。ところが明治以降、石油系の安価な西洋ろうそくの普及もあり、和ろうそくは衰退することになります。大本山などの各宗派の寺院では、今も仏事に和ろうそくが使われていますが、その原料は櫨(はぜ)の実で入手が非常に困難なため、和ろうそくは希少品。和紙にいぐさを巻き付けた芯も含め、原料はすべて植物性です。ゆらゆらと炎が揺れるのは、芯にいぐさによる段差があって不完全燃焼を起こしながら燃えるから。炎が揺れることで陰影をつくり、幻想的な空間を生み出すのです。今回、ろうそく販売にご協力いただく中村ローソクは1887年の創業。蝋や芯など材質にこだわり、現在も蝋職人3人、絵付け職人2人が、昔ながらの手作業で和ろうそくをつくります。
和ろうそくは再生や再利用できるエコな商品です。仏事などで灯した後、残ったろうそくは、中村ローソクが買い取り、新しい和ろうそくに再生しています。さらに、溶けた蝋も再利用してキャンプ用の固形燃料に。植物性の材料でつくるものだから土に還しても、自然に悪影響を及ぼすことがありません。また、和ろうそくの煤はすぐに落ちるのも特徴です。石油系のろうそくの煤はこびりついて、洗剤を使わなければ取れないのですが、和ろうそくの煤はサッと払うだけで落ちます。寺院では、その昔は必ず和ろうそくを使っていたので、建物や仏具は美しい姿をとどめていました。ところが、この百年ほどの間に西洋ろうそくを使うようになり、修復を必要とするほど建物が傷む一因になってしまったのです。
和ろうそくは西洋ろうそくより高価ではありますが、消えづらく美しい。寺院の和ろうそくの炎がゆらゆらと揺れると、その影が襖に映って風情を生み、仏像の表情を変えます。昨今はキャンプや焚火が人気ですが、人はその揺らぎに感情移入するのかもしれません。私たちの暮らしのなかでも和ろうそくの使い方は多彩です。寝室やバスルームなどで灯して瞑想するのもいいし、食事の際の灯りとして使うのもいい。LEDや蛍光灯ではつくることのできない陰影で暮らしに豊かさをもたらします。扱いが難しいと思われがちですが、一度覚えてしまえば簡単です。万が一蝋がこぼれても、熱いお湯で拭けばすぐに取れます。今回販売するのは、赤白の和ろうそくと燭台、芯切りのセットと、和ろうそく単品です。谷崎潤一郎が描いた『陰翳礼讃』の世界観を、ぜひ自宅でも楽しんでください。
他では手に入れられない、
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