ただ美食を求めるのではなく、数々の「食を学ぶ会」を企画してきたエピキュリアンですが、今回ご体験していただくのは、タイ料理です。「トムヤムクンとかカレーとかパッタイとか?」と思われるかもしれません。でも、現在私たちがタイ料理と認識しているのはすべて、庶民の家庭料理なんです。18世紀の中ごろ、タイが隣国ビルマに侵略された時に町だけではなく文化も破壊されてしまったのです。もちろん、当時の食文化や食の哲学を担っていた宮廷料理も同様に破壊され、それまで栄華を極めていた王朝のレシピも失われてしまいました。日本では知られていないタイ料理の歴史です。
長い間、失われたままのタイ料理文化でしたが、21世紀になって、やっと救世主が現れます。タイ在住のフランス人でとてつもない美食家のフレデリック・メイヤーさんと、タイ人の天才料理人のアースさんのふたり。近年、タイ料理が世界の美食家たちに注目されていますが、メイヤーさんはその仕掛け人のひとり。彼がオーナーの「イッサヤー・サイアミーズ・クラブ」はアジアのベストレストラン50にもランクインしています。でも、メイヤーさんが真に実現したいのは破壊されたタイ宮廷料理の再現でした。タイ北部のチェンマイの山奥に住む仙人のような暮らしをしている研究家の話を聞きつけたメイヤーさんは、その人の元で食文化と思想を学びます。そして、見事に現代に再構築。それを形にしたのがアースさんです。バンコクに開店した「SAAWAAN(サーワーン)」は、開業から7カ月でミシュラン一ツ星に輝き、2020年にアースさんはタイのベストシェフに輝きました。
再構築されたタイ宮廷料理の思想とは、「タイの五味を基本に色味や調理法が美しく調和していること」。タイの五味は甘味、酸味、塩味、辛味、旨味。一般的なタイ料理は辛いものが多いのですが、サーワーンの料理はこの五味が渾然一体になっていて、辛さだけが突出することはありません。そして見た目も多色で美しい。まるでフレンチのファインダイニングのような盛り付けで供されます。調理法も焼き、蒸し、炒め、茹で、発酵、生、漬けを駆使し、調理法と五味が相まって複雑で豊かな味わいの料理になっています。 本国と違い、東京の「サーワーン ビストロ」はカジュアルダウンしたアラカルト中心のお店ですが、今回、アースさんの来日に合わせ、本国のようなコース料理に、さらなるクリエイションをプラスしたエピキュリアン特別料理を作っていただきます。日本の食材と出会った究極の美食家と天才料理人が、どんな新しいタイ料理を編み出すのか? どうぞご期待ください!
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